食のエキスパート 浅野 裕紀

「文化」を「産業」に。
「食」の可能性。

「料理王国」を皮切りに「食」の世界に生き「食」は文化そのもの、かつ地域経済活性化の重要な要素であることを実感してきました。

北海道が進める食のブランド化に関わるようになってからは、長年培ってきた知識や、最新の情報、ハイレベルな料理人をはじめ国内外の多様な「食」に関わる人的ネットワークを、北海道での様々な取り組みのために生かしてきました。「食彩塾」では、まだ6次産業という概念が一般に広がる前から、6次化が北海道経済にもたらす価値を訴えました。いまでは当たり前になった料理人の生産地訪問も、その先駆けは自分たちではなかったかと思っています。すぐれた料理人、生産者、加工業者、流通業者、自治体、企業をつなぐ場を道内各地、様々なかたちでつくり、地方に新しい流れを生むことができました。

私は料理人でも生産者でもありませんが、だからこそ課題に対して多彩な視点を持ち込み、必要な組合せを考え、バランスのよい環境をととのえられます。各分野を深める役割は、それぞれの専門家に任せればいいわけです。例えば、北海道ではチーズづくりが盛んですが、工房が増え始めた頃はどこもカマンベールを製造し、高品質でも個性に乏しいという課題がありました。そこで、イタリア・パルマで実践されている、硬質チーズ、パルミジャーノ・レッジャーノの生産の仕組みを提案し、導入にいたりました。これは金融機関も巻き込んだ仕組みですが、ちょっと視野を広げることで、こうしたブレイクスルーポイントを生み出せることもあります。

ふるさとへ
恩返しの時が来た。

長く北海道を離れながらも北海道企業誘致推進委員の任に就いた頃から、私は自分を育ててくれた北海道のために何ができるかを考え、同じ委員仲間と東京の灯の下で酒を酌み交わしつつ北海道の活性化を熱く語り合う時間を重ねるようになりました。経験を積み、知識や人脈という財産を得た者は、いずれはふるさとに貢献すべきという心のどこかにあった思いを実行に移す時が来たと感じました。

私自身はいまも拠点を東京に置いていますが、それは私自身の価値である情報収集や人脈の維持、拡充のためです。もちろん、北海道の課題解決には、あらゆる知識と人脈を携えて現場主義で臨みます。地元の未来を熱っぽく語り合える方との出会いを楽しみにしています。

浅野 裕紀

浅野 裕紀
ASANO Hiroki

十勝管内音更町出身。慶應義塾大学法学部卒業。

大日本印刷(株)、(株)リクルートを経て、
1996年(平成8)(株)料理王国を設立、代表取締役就任。月刊誌「料理王国」、食関連書籍を刊行。2008年、代表取締役退任まで食文化のハイレベルな情報発信を牽引。10年にわたりイタリアへ年2回足を運び続け、とくにイタリア料理に造詣が深い。

2009年(平成21)食材研究会「食彩塾」を立ち上げ主宰に。道外で活躍するレストランのオーナーシェフ、経営者などと、道内各地の生産者をつなぎ、北海道の食材掘り起こしのきっかけをつくる。

「食彩塾」の経験を生かし、「食」を切り口にふるさと北海道の未来に貢献すべく、2013年(平成25)、若杉清一、斉藤博之と共に(株)食彩創研を立ち上げ取締役就任。

2014年〜はオカモト(株)アドバイザーとして業務用吸水シートの市場開発、2015年〜(株)札幌丸井三越とアドバイザー契約のもと「どさんこプラザ有楽町店」及び首都圏店舗での新規商品仕入れサポートにあたっている。

1996年(平成8)〜1997年 リストランテ・イタリアーノ※1審査員
2004年(平成16)〜2005年 北海道企業誘致推進委員(北海道知事より委嘱)
2006年(平成18)〜    北海道「食のサポーター」※2(北海道知事より委嘱)

※1イタリア大統領・イタリア大使館・イタリア貿易振興会が正統なイタリア料理店を認定して授与する称号
※2首都圏はじめ各地の食分野の第一線で活躍する北海道出身者を中心に、全国、海外に通用する北海道ブランドの創出を図る

若杉 清一 斉藤 博之